歯周病と全身疾患

皆さんは「歯周病が全身の病気と関係がある」という話を、一度は耳にしたことがあるかと思います。実際、歯周病は単に歯肉に炎症を引き起こすだけの病気ではありません。心疾患や肺炎といった、命に係わるような病態を引き起こすリスクがあるのです。

けれども「なぜ、歯肉の病気が心臓の病気とつながるの?」という疑問を持たれる方が大半ですよね。ここではそんな歯周病と関係が深い以下の全身疾患について、わかりやすく解説します。

  • 感染性心内膜炎
  • 動脈硬化狭心症
  • 心筋梗塞
  • 誤嚥性肺炎
  • 糖尿病
  • 早期低体重児出産
  • 骨粗鬆症

心臓や血管の病気との関係

歯周病によって生じた炎症を引き起こす物質が全身へと広がる

歯周病は、歯肉や歯槽骨に炎症を引き起こします。その際、サイトカインなどの炎症性物質が沢山作られています。これが血流に乗って、全身へと広がると、血管を始めとした様々な病気を引き起こすこととなるのです。

炎症性物質が原因で発症する病気

歯周病が進行することによって増加した炎症性物質は、血流に入り、動脈硬化を促します。その結果、血管壁にプラークがたまりやすくなり、狭心症や心筋梗塞を発症しやすくなるのです。また、心内膜と呼ばれる心臓の膜にプラークが感染したり、炎症が引き起こされたりすることで、感染性心内膜炎を発症する原因にもなり得ます。

肺炎を引き起こすメカニズム

誤嚥性肺炎は、歯周病が原因となることが珍しくありません。口腔内で増殖した細菌を食べ物と一緒に誤嚥することで、肺の中に炎症が生じます。ちなみに誤嚥(ごえん)とは、食べ物が食道ではなく、気管へと誤って入ってしまう病態です。

インスリンの働きを邪魔して糖尿病を引き起こす

糖尿病は、血糖値を下げるインスリンが上手く働かなかったり、産生量が低下したりすることで発症する病気です。歯周病は、そんなインスリンの働きを阻害することが知られており、糖尿病のリスク因子であると明確に位置付けられました。また、糖尿病も歯周病のリスク因子であるため、負の相互作用が働き合う厄介な病気といえます。

早産や低体重児出産を引き起こす

歯周病は、出産との関連も深いです。歯周病によって生じた炎症性物質が子宮に到達すると、子宮筋の収縮を促し、早期に出産することを迫るからです。その結果、早産や低体重児出産を引き起こします。

骨粗鬆症が歯周病を悪化させる

骨粗鬆症は、全身の骨密度が低下する病気ですので、顎の骨に炎症が現れる歯周病にも影響が及びます。骨粗鬆症によって顎の骨がもろくなれば、歯周病の症状も悪化します。

まとめ

このように、歯周病は歯肉の炎症だけでなく、心臓や肺、それから子宮といった重要な臓器の炎症を引き起こすリスクがある病気ですので、たかが歯周病とは考えず、予防や症状の改善に努めましょう。

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